膨大なタスクと向き合い、丁寧なコミュニケーションでDXの魅力を伝える
本コラムでは、弊社コンサルタントがプラットフォーム開発プロジェクトを振り返り、苦労したことや成長を感じること、思い出に残った出来事などをまとめています。
膨大なタスクと向き合い、
丁寧なコミュニケーションでDXの魅力を伝える
「こんなこともできるのか」と感心の声も
プラットフォームの開発を成功に導いた立役者の一人、福田久仁佳。プロジェクトを振り返り、苦労したことや成長を感じること、思い出に残った出来事などを語ります。弊社のコンサルタントだからこそ、得られた経験もあるとか。
プラットフォーム構築は会社初のプロジェクト。ゼロからのスタートに苦心するも、道を拓いた
本プロジェクトはお客さまである「丸紅テクノシステム」と弊社、開発ベンダーの3社で進めました。私たちはコンサルティングファームですが、プラットフォームの開発にも一部携わっています。
私にとって、今回使用するツールは初めて扱うものでした。とはいえお客さまの疑問を解消したり、要望を叶えたりする役割であり、当初は「質問に的確に答えなければ……」と強いプレッシャーを感じていました。
ひたすらツールに触れ、お客さまの要望を咀嚼したうえで、まずは「標準機能でできること」「拡張機能ならできること」「拡張機能でも不可能なこと」に分類した後、トライアンドエラーを重ねました。失敗したら調べ直すというループを繰り返すなど、技術を身に付けるまではとにかく大変でしたね。
お客様がプラットフォームに対して抱く高い期待と、それを実現しようと努める開発ベンダーとの間には、時に理解のギャップが生じることがありました。また、開発ベンダーは専門的な技術や用語を使いがちだったので、お客さまに向けてわかりやすい言葉に“翻訳”も行い、お客様とのコミュニケーションを円滑にしました。
本件は検討すべきテーマが非常に多く、お客さまが12の分科会を設けてくれました。第一営業本部の約30人が参加し、メンバーには今回の取材を受けてくれた皆さまも含まれています。当初は各分科会の会議にも顔を出し全ての要件を把握していました。誤りがないようタスク管理ツールを用い、お客さま、弊社、開発ベンダーのいずれもが閲覧できるよう管理しました。
取材でも触れられていたように、プラットフォームの導入にはお客さま内でも賛否両論がありました。もちろんDX管理チームは前向きですが、アシスタントの皆さまは「覚えることが増える」と、技師の方々は職人気質で「デジタルなんて分からん」といった傾向が強かったように思います。
それでも全員が参加しなければ本来の機能を発揮できないので、丁寧なコミュニケーションを心がけました。特にアシスタントや技師を指導する立場であるDX管理チームの講習会や育成には時間をかけましたね。また、お客さまが求める機能を1つ実装するためには、膨大なタスクが生じます。業務遂行のために「誰にも邪魔されたくない」と周囲をシャットアウトしたこともありました。
加えて、今回のようなプラットフォーム開発は弊社初のケースでした。類似事例は皆無でゼロからのスタートとなり、特に資料作成の負担が大きかったです。しかし現在では私の資料が類似プロジェクトのサンプルになっているので、達成感や充実感は十分に得られています。
プロジェクトを通じ、初めてのツールに対するアプローチ、コミュニケーション、タスク管理、問題解決の各能力が磨かれた
本件を通し、技術面は確実に向上しました。私にとって初めてのツールを使いましたが、ずいぶん詳しくなりましたね。ただ、スキル面よりも全く知らないツールに対するアプローチの仕方を、身をもって経験できたのが大きな成長につながりました。「やるしかない」でしたね。
また、お客さまと開発ベンダーの仲介役になったことが評価されましたが、これこそ「仕事におけるコミュニケーション能力」でしょう。立場の異なる関係者がいて、それぞれの背景を知り、各自のできることとやりたいことを理解した上で折衷案を見つけていく力が磨かれました。
さらに、先ほどタスク管理の話をしましたが、このスキルも含めてプロジェクト管理能力が身に付きました。当初は上司に抜け・漏れを指摘されたこともありますが、今ではすっかり解消しています。何度か繰り返していくうちに、私の中に「仕事の進め方のテンプレート」が作られ、もはや本能的に手が動くようになりました。
あとは問題解決能力も磨かれましたね。未経験のプロジェクトを成功させ、しかもお客さまに喜ばれているのは、小さな問題解決を重ねた結果に他なりません。資料作成しかり、問い合わせ対応しかり、しかも迅速さに徹したことも重要な成長材料になりました。
なお、本件に携わった弊社のメンバーは2人の上司と私です。お客さま先で実動する私が手を止めてしまったらプロジェクトも止まります。とにかく「仕事には責任持ちたい」との思いが強かったです。
知見を生かして製造装置のエラーをデータ分析。「福田さんじゃなきゃ……」の評価も
そもそも私は大学と大学院で情報分析を研究していました。データ自体は「誰にも否定できない、絶対に正しいもの」であり、誤解を恐れずにいうと、データは有識者のコメントよりも信憑性が高く「データ分析こそ正義」という考え方が私の中に染みついています。実は今回のプロジェクトでもデータ分析を実施しています。
取材中には予兆検知という言葉が出たのですが、プラットフォームの完成後には製造装置の不具合情報も集めるようになりました。例えば、「製造装置のドアが開いたまま」、「装置内が高温過ぎる」、といった症状ごとのエラー番号と、それぞれの稼働停止時間を計測し、相関を取っています。
さらに全国に数百台ある装置のデータを分析し「このエラーならコールセンターで対応できる」「このエラーは技師を派遣しないと解決できない」と分類しました。これでエラー対応の方針もすぐ立てられますよね。「プラットフォームで一定のデータを蓄積すれば、こんなこともできるのか」と、お客さまにも飲料メーカーの皆さまにも非常に感心していただけました。
なお、お客さまの一人から「福田さんでなければだめだ。我々だけではプラットフォームを完全に動かせないから、プロジェクトに残ってほしい」とお声がけいただいたことがあります。他の人にもできる業務で感謝されるのもうれしいですが、私が考えた分析を評価いただいたことは、まさにコンサル冥利に尽きるひと言葉でした。
その方はプラットフォームへの強い興味や理解力があったため、プラットフォームの非常に詳細な箇所まで説明しました。何でも吸収してくれ、いつの間にか社内で「プラットフォームのことならあの人に聞こう」という役割を務めていましたね。本件で最も印象的な出来事かもしれません。
構想策定から運用まで一気通貫で支援し、コンサルタントとして貴重な経験を積む
本件では構想フェーズから運用までマルチに担当させてもらい、貴重な経験が積めたのも会社のおかげです。一般的なファームだと要件定義だけ、実装だけ、運用だけ、と“こま切れ”になりがちで、全フェーズに携われるコンサルタントは少ないと思います。
だからこそプラットフォームが完成した暁には、私はエンドユーザーに周知するポスターの案出しや、PR動画の撮影や編集までも引き受けました。プロジェクトを通じ、お客さまと会社から「福田に任せれば何とかしてくれるだろう」と思われるようになっていたらうれしいですね。
著者
サステナビリティ&デジタルイノベーション本部シニアコンサルタント
福田 久仁佳
京都大学大学院を修了後、外資系ITベンダーおよびコンサルティングファームを経て2021年に入社。主な専門領域は、統計学・機械学習を用いたアナリティクスソリューションの提案・実行支援。デジタル技術を活用した業務改善、ビジネスモデル構築、新技術の検討と実証実験、育成、システム化構想策定などに従事